《MUMEI》 私は知らなかった。 晶がどんな想いで、この言葉を発したのかを… 『主、何故、障子を開けたのです?』 「慌てていただけだ」 ゆきが身支度を整えている頃、神も正装に身を包んでいた。 『それだけ、ですか?』 「他に何がある」 実際、あの時、神は慌てていた。 春に神楽がゆきの事を『あの方』に報告したはずなのに。 先程、近くで仕事があったからと神と神楽に挨拶に来た、『あの方』縁の客人はこう、言った。 「こちらの神様も含めた『五人の守護神様』はお変わりありませんか?」 と。 「何故です!母上」 「あの娘の事は言う必要は無いと思ったからです」 いくら問いつめても、それ以上神楽は口を開かなかった。 「ゆきは守護神です!」 「待ちなさい、神!」 しかし、走り出した神は止まらなかった。 やがて、ゆきのいる部屋を神は発見した。 その時、本当に偶然。 部屋の前にいた晶が、使用人に話しかけられ、その場を離れた。 神は何故か『今だ』と思い 迷わず、障子を開けた。 部屋から聞こえた女達の楽しげな声と、晶が外にいた事から、神には中の状況は、ある程度予想はついていた。 前へ |次へ |
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