《MUMEI》

その時の

ゆきの白い背中を見た時

神は自分の中に熱いものを感じた。

震えるゆきと自分の前に立ち塞がる紗己を邪魔だと

後から駆けつけ、ゆきを抱き締めた晶を

死ねばいいと

本気で思った。

同じ女の守護神でも、神は翔子にそんな感情を抱いた事はなかった。

仮に、翔子が他の誰かと交わっても、神は気にはならなかった。

それなのに。

ゆきの、あの

白い背中が

震える体が

潤む瞳が

頭から離れなかった。

(触れたら、どうなるだろう?)

『主? どうされた?』

「いや、…ゆきの支度はまだか」

『気配が近付いていますので、じきかと』

「そうか」

神は、じっと自分の手を見つめていた。

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