《MUMEI》
電車 〈おれ〉
…蓬田、なんでこんなに怒ってんだ??


空いてる席に並んで座ったきり、
蓬田は一言も喋らなくなってしまった。


―…おれ、なんもしてねえよ??

てか、電車にも間に合ったじゃねえか。



「なあ蓬田、なに怒ってんの」



ぴりぴりとした沈黙に耐え切れず、おれは口を開いた。



「…おれ、蓬田、じゃないですけど」



ぼそっと呟く蓬田。


だー、もうっ!!
めんどくせー!!!



「…どうして怒ってんの、椎名くん??」



言い直すと、



「…怒ってない。―…恥ずかしいの!!」



という返事。



「…なにが…」


「なにがって、脚!!開かないでって約束でしょ!?」


「ん??…あ」



スカートはいてるにも関わらず、
おれの脚は全開だった。

あわてて閉じる。



「…もー…気づくかな、って思ってたのに…」


「気づいたらすぐ言えよ!
お…ワタシ、回りくどいの苦手なんだよ!!」



てか…



「―…お前も、脚!!
…内股になってるわヨ??椎名クン♪」


「…え??―…あっ」



蓬田は、慌てて脚を開く。

こんなんで大丈夫かよ…



「「はあああぁぁ…」」



おれたちは同時に大きなため息をつく。


そして、顔を見合わせると、
なんだか可笑しくなってきて一緒に笑ってしまった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫