《MUMEI》 電車 〈おれ〉…蓬田、なんでこんなに怒ってんだ?? 空いてる席に並んで座ったきり、 蓬田は一言も喋らなくなってしまった。 ―…おれ、なんもしてねえよ?? てか、電車にも間に合ったじゃねえか。 「なあ蓬田、なに怒ってんの」 ぴりぴりとした沈黙に耐え切れず、おれは口を開いた。 「…おれ、蓬田、じゃないですけど」 ぼそっと呟く蓬田。 だー、もうっ!! めんどくせー!!! 「…どうして怒ってんの、椎名くん??」 言い直すと、 「…怒ってない。―…恥ずかしいの!!」 という返事。 「…なにが…」 「なにがって、脚!!開かないでって約束でしょ!?」 「ん??…あ」 スカートはいてるにも関わらず、 おれの脚は全開だった。 あわてて閉じる。 「…もー…気づくかな、って思ってたのに…」 「気づいたらすぐ言えよ! お…ワタシ、回りくどいの苦手なんだよ!!」 てか… 「―…お前も、脚!! …内股になってるわヨ??椎名クン♪」 「…え??―…あっ」 蓬田は、慌てて脚を開く。 こんなんで大丈夫かよ… 「「はあああぁぁ…」」 おれたちは同時に大きなため息をつく。 そして、顔を見合わせると、 なんだか可笑しくなってきて一緒に笑ってしまった。 前へ |次へ |
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