《MUMEI》
電車 〈私〉
がに股なんて…

癖ついちゃって、戻ったときにも
そのままだったらどうしよう…

早く、はやく戻る方法考えなきゃ!!!


そんな焦りと不安とともに、大きなため息を吐き出すと、


タイミングが椎名くんと同じで、


私たちは顔を見合わて、笑ってしまった。



―…と。



電車は、私たちの降りる駅に到着した。



「降りなきゃ」


「おう」



荷物を持って立ち上がる。



「降りたら、学校まで別々に行こう」


「…なんで?」


「一緒に行くの、誰かに見られたらまずいでしょ!?」


「…ふーん。誰に見られるとまずいんだ??」



私は、その質問に一瞬固まる。

―…椎名くん、わざと訊いてる…??




「…だ、誰って…そんなの―…」

―…西城先輩に決まってるでしょ!!



「ク、クラスの皆に決まってるでしょ!?」


「はいはい。わかりましたよー」



そう言うと、椎名くんは先に歩き出した。



…??


椎名くん、歩き方、変―…




「あ。」



気づいた。

椎名くん、一生懸命女の子っぽく歩こうとしてくれてる―…


それで、変な歩き方になっちゃってるんだ。


その背中を見送りながら、
私はなんだかお腹の辺りがくすぐったくなって、


また、笑ってしまった。

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