《MUMEI》

「晶!」

晶が私を抱き締めている神君の腕を掴んだ。

その隙に、私は神君から離れ、晶の後ろに隠れた。

『大丈夫でしたか?』

「うん。からかわれた…みたい」

神君は何事も無いような顔をしていた。

『姫』は相変わらず神君に寄り添っていた。

さっきは、仕方なかったけれど。

私には、晶がいるように

神君の側に『姫』がいる。
この形が、私達にとって当たり前なのだ。

たとえ、晶が人間でなくても、私にとって、一番大切なのは晶だった。

「これは、御剣の…」

屋敷の門番は、神君に挨拶をする途中で…

「あなた、様は…!」

私を見つめて、絶句した。
「あの…」

その人は、みるみるうちに『黄』になった。

「あぁ、よくぞ、今までご無事で!

御剣の方が見つけて下さったのですね!

おい、当主に早くお知らせしろ!」

「はっ!」

「神君、…当主って?」

私の質問に、神君は

「この国を、もっとも厄介な災害から守ってらっしゃる方だ」

もっとも厄介な災害。

私が首を傾げると、神君は続けた。

「人間が起こす、人災だ。こちらの当主は、人の悪意や負の感情を取り除く『守護神』だ」

―と。

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