《MUMEI》

「それにしても…これは一体、どういう事だ?」

神君は首を傾げた。

屋敷の人々は、私を見つける度に、『黄』になっていった。

それだけ、私を歓迎しているという事、なのだが…

「晶」

『はい、主』

「晶は、何か、知ってる?」

私は、何もわからないから、晶に質問した。

『それは…』

晶が答えを濁した時。

「それで、どこにいるの?!」

「お待ち下さい、当主」

「待てるわけ無いでしょう、どれだけ私がこの日を待っていたと思うの?!」

長い廊下の向こうから、走ってくる

神子姿の『橙』の女の人が見えた。

「あれは、神音(かみね)様?」

神君が、様を付けるくらいだから、あの人が『あの方』で、もう一人の『守護神』だと思った。

その、神音様が、息を切らして走ってきて、私を抱き締めた。

「え、…あの?」

「あぁ、会いたかった…」
腕の中で戸惑う私を、神音様が見つめた。

その目から、涙が流れていた。

そして、続けた。

「本当に、…神那(かんな)お姉さまに、…生き写し、だわ」

―と。

「あの、それって…」

(まさか)

「あなたの、…お母様よ」
そう言って、神音様…母の妹だと言う女の人は、微笑んだ。

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