《MUMEI》

通された部屋は、神楽様と初めて会った場所によく似ていた。

しかし、そこには、凍るような殺意の『紅』はなく、『黄』や『橙』が溢れる温かい空間だった。

何故か部屋にいたのは、女性ばかりだった。

「さて…と」

神音様は台座に座り、御鏡家について、説明を始めた。

御剣家は、わかりやすく、その名の示す通り、『剣』を生み出して、『自然災害』から国を守る一族だが

御鏡家は、鏡を生み出す一族ではなく。

むしろ、御鏡家が相手にするのは、『鏡に写らない』存在だと言う。

それを、わざわざ『御鏡』と言うのは二つ、意味があり…

一つは、御鏡家の相手は人であるから、露骨に能力や存在を示さない為の『隠し名』として。

そして、もう一つは

御鏡の直系の女性が、『人の本質を写す特殊な目の持ち主』だったからだと神音様は言った。

御鏡の力はいわゆる霊感と呼ばれるものに近く、女性の方が強い場合が多く、その為、御鏡一族の当主は代々女性だと言う。

「当主は、私ではなく神那お姉さまの予定だったのよ。

お姉さまは、誰よりも優れた『目』の持ち主だった」
そう言って、神音様は私に近付くと、私の眼鏡をはずした。

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