《MUMEI》

私は、仕事と『守護神』の屋敷にいる以外は最近眼鏡をずっとかけていた。

久しぶりに見る鮮やかな色に、私は戸惑った。

(あれ?)

何故か、空中の紫は見当たらなかった。

私がキョロキョロしていると、

「ここに、『紫』は入れないから、安心していいわよ」

目の前の神音様が、笑顔で言った。

「『紫』?」

私の隣の神君が、不思議そうな顔をした。

「私達御鏡一族の直系の目には、『幽霊』は『紫』色なのです。

ゆき、私は何色?」

「え?」

私は、神音様を見つめた。
「大丈夫よ。正直に言いなさい。

…さぁ」

私は、悩んだ末に

「…『橙』?」

と小声で言った。

そんな私を神音様はまた強く抱き締めた。

「間違い無いわ!

あなたはやっぱり御鏡家の一員よ。

『人の色が見える目』

それこそが、確かな証だわ!」

「そう、なんですか?」

ずっと、『変な目』なのは、私だけだと思っていた。
すると、神音様は

「そうよ。だからいつまでも『灰色』でいないでね」
と言って、微笑んだ。

『灰色』は、私が神音様を『疑っている』証だった。
(本当に、見えるんだ)

私は、初めて自分と同じ世界を見ている人達に出会えた。

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