《MUMEI》
ピルケース
 私は薬をケースの中にしまった。
「ねぇ・・・・大翔(ひろと)」
「何だよ・・」
「私が死んだら・・大翔はどうなるの?」
「死ぬに決まってんだろ。俺は元々死んでるんだから」
「でも・・・・」
「心月(みつき)・・俺は使(つかい)だ。人間とは全然違う」
「知ってる・・けど」
「お前が死んだら・・俺も終わりだ」




 私が大翔に出会ったのは中学1年の時だった―。


「何で・・あんな事・・・されなきゃいけなかったの・・・・・・」
心月が1人つぶやく。

「ちょっといいかな・・・」
「あなた、誰ですか?」
「すみません、申し送れました・・神崎 優(かんざき ゆう)です」
 すらっと背が高い男の人だった。
「・・・」
「心月さん・・・・」
「・・・!!私の名前・・知ってるんですね・・・・・・」
「知ってますよ・・。だってあなたのお父様は殺人犯ですからね・・・」
「・・・え・・・」
「知ってるんですよ。貴方のお父様がお母様を殺した事」
「何で、知ってるんですか?」
「・・あなたが今、一番欲しい物をあげますよ」

「・・・・・そんな物いらない・・・私が欲しい物は現実しないから」
「ほしい物が現実しない?」
「はい、だから必要ありません」
「あなたの欲しい物なら用意してありますよ」
「・・・!!」
「死の薬を・・・」
「薬・・・・・?」
「そうです。何も証拠を出さないで人を殺せるんです。人を殺すための新たな手段です。人間が生んだ兵器というもの・・・ですから」
「そんなの信じられません。人を殺したら足がつく」
「これには何もないんです。証拠は。だからばれても証拠が無ければ警察もどうにもできないんですよ」
「じゃあ、その殺人方法を見せてください」
「いいですよ、この場で人一人殺して見せます」
 男は薬を飲んだ。
「いいですか?あの人を殺しますよ」
 カフェの店員の男の人を指差した。
「あと・・10秒・・・・・5・・4・・3・・2・・1・・」

「ウッ・・・」

「あっ・・・」
「ほらどうですか??」
「でも、人一人じゃ事前にそういう計画を立てていればどうにかなるはずです」
「本当にそう思う?」
「はい」
「じゃあ、誰を殺せば信じられる??」
「この道を通った軽自動車の助手席に座っている女の人・・を殺して・・この条件に当てはまる人をこの車の順番で探していって・・一番早い車」

「分かりました」

 ここまで、予想のつかないことを言われれば、さすがに事前に毒を飲ませるとか、そんな事はできないはず・・。


「ゴクリ・・・」
「あの人ですね・・・」


「ウッ・・」

「あっ・・・」

「これで信じていただけたでしょうか・・・」
「本当みたいね」
「欲しいですか」
「どれくらいするの?」
「一粒・・1000です」
「わかりました、買いましょう」
「では、何粒?」
「2粒・・・」
「初回だけ、掟本(ルールブック)が付きます。この本は絶対読んで下さい。殺人に必要な掟が沢山書いてあります」
「はい・・」
「最新の情報を取得するため・・他のuserが得た情報を公開すれば、薬のuserであれば無料で情報を閲覧できます。ネットの掲示板に近いような感覚です。いつでも最新の状態に更新してあります」
「わかりました」
 一見、普通の薬と同じようなカプセルが2つと、分厚い本が一冊、ピルケースが一つ。


 これで・・私の夢が実現する。

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