《MUMEI》

洗いものは裕斗がしてくれている。




人の家なら億劫じゃない性格だから、まあ本物のものぐさじゃないんだろうな。



「泊まってく?」



「うん、お湯ぬかないで」




俺は裕斗に後片付けを任せて、風呂に入った。








最近俺達はこうして泊まり合いしている。




伊藤さんはなんだかんだ多忙で滅多に会えないみたい。




誰かに恋してる時ってなんか一人でいるのは寂しいもんな。
俺も一人でいるより裕斗がいてくれた方が楽しいし、なにせここまで気をつかわないでいられる奴に巡りあえたのは中学生以来。




中学っていえば納瀬
元気かな、全然連絡してねーや…。


つか、中学時代か…


中学時代は色々あって……、




あんまり思いだしたくない……。








俺が風呂を出ると、裕斗は直ぐに入れ替えで入った。




既に持ち込まれてる裕斗のパンツとTシャツがテーブルの上に乗っかっている。



それと俺が上がるまで暇つぶししてた形跡。





小さく切っておいたカレンダーの裏に文字が書いてある。





意外と綺麗な字で一枚の紙につき一行の文章。



「くせー」




ふと思った事を書くのが好きなんだって。



教科書とかにまで書いてたって。




自慢気に見せる訳でもなく、かと言って恥ずかしがる訳でもない。


自然にこんな事を日常的にするところ、…俺には真似出来ないね。



「これ…」




何枚かの一枚、強烈に惹かれて俺は一瞬呼吸が止まった。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫