《MUMEI》
学校 〈私〉
私が学校に着くのが遅れたのには、
時間差で行こうという意図的なものと―…


…もう一つの理由があった。


椎名くんの後姿をしばらく見送ったあと、
そろそろ行くか、と歩き出そうとすると、



「ああああのっ!!!」



と、呼び止められた。



振り返ると、



「あ、あの!!…し、椎名…みつるくん、ですよね??」



と、小さくて可愛い女の子に訊かれた。

顔は真っ赤で、少し震えている。


…近くの女子高の制服。
椎名くんの、知り合い??



「…あの、あたし、空手のっ、
空手の試合見て、それでっ…!!」


「…は、はあ…」


「この駅使うって聞いて、でもどの時間か分らなくて、
だから、待ってたら、見つけて…
…って!!あたし何言ってるんだろ…」



しどろもどろにそう言ってうつむく女の子。

椎名くんに用事かな…??
なんか、パニクってるみたい…



「えっと、どうしたの??」



私がその子の顔を覗き込むと、
その子はさらに赤くなった。



「…つっ、つまり!あの―…


…初めて見たときから、好きでした!!

―…あたし、吉田ゆりっていいます!!
よかったら、あたしと―…
つ、つつ付き合ってください!!!」



そう言うと、その子は頭を下げた。



「…………!!!?」



椎名くん!!あたし、どーすれば!?



「…いきなりごめんなさい…!
あの、返事、いつでもいいですから…
これ、あたしのアドレスです!!」



そう言って小さな紙切れを手渡すと、その子は
見守っていたらしき友達のもとへ駆けていってしまった。



椎名くん…


もしかして、モテモテ!?

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