《MUMEI》 「ねぇ、ゆき。 あなたさえ良ければ、このままここに残らない? あなたには、その資格が十分にあるわ」 「ここに?」 この、御鏡の、母の実家に。 御鏡の一員として。 「でも…」 私はチラッと晶を見た。 「もちろん、男でも、『剣』の分身なら、受け入れるわ」 神音様の言葉に、私の心は揺れた。 御剣よりも、御鏡の方が、明らかに私を歓迎している。 それに、ここでは他の男の『守護神』に襲われる心配もない。 気になるとすれば、仕事の事だった。 「あの、人災から国を守るって、どうするんですか?」 まさか、人を斬る…なんて、しないだろう、と思うけれど。 …それは、私にはできなかった。 「大丈夫。生きている人間の『黒』や、かつて人間だった『紫』を取り除くだけだから、命は奪わないわ。 普通は、念じるだけでできるけれど、あなたは…」 『私が斬って取り除きます。 その時の刃は、人間を傷つけません』 神音様の言葉に、晶が答えた。 (それなら…) 私にも、大丈夫だ。 これで、心配事は全て解決した。 「どう? ゆき」 神音様はもう一度、私に問いかけた。 前へ |次へ |
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