《MUMEI》

面会の名簿に名前を記入する。

自販機でミネラルウォーターを買ってからエレベーターで上ってゆく。

一緒に乗り合わせる人達がいなくなる。
静かな密室の中で着いた音が反響するのが嫌だ。

もっと言うと、私は病院が嫌いだ。

病院は注射、入院、死の象徴だから。


「オーっス!」

レイは以前より青白い。殊更、前回と変わらないテンションでの挨拶を心掛ける彼女を見るのが痛々しかった。

「水、ハイ。あとノートね」

頼まれもの以外は受け付けないので余計な見舞い物は持って行かなくなった。

「笹川君の方は?」

「ん、まあまあ。」

「レイって、タンパクね」

…………自分の結婚のことなのに。

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