《MUMEI》

「何ギターなんか弾いちゃって」


バスタオルで髪をクシャクシャに拭きながらニコニコ顔で正面に座られる。



「バカ、早くシャツ着ろ!キスマークだらけの裸見せんな!いやらしい!」


「う゛、うん、ごめん!」


裕斗は慌てて立ち上がってシャツを着ている。



「まったくいつの間に…」


「今日同じ局で仕事だったから…、トイレで軽く…」



「…ぅおい!」




「だって会ったらしたくなんじゃん!好きなら当たり前だろ?」



「そうだけどさ〜、
はあ…」



だから今日はこんなにも切ないフレーズが出てくるのか。



恋愛してないと出てこない、実践がないと出て来ない、大人のフレーズ。




「じゅんは?」



「へ?」



「今日内藤君と最後までしたの?」




「す、するか!いきなりするかよ!つか、
いいよしなくて!!」




自分でも顔が熱ってきたのが分かる。
そんな!内藤とセックスなんて想像しただけで…




ムリ!ムリ!


ぜってームリ!!




「でもしたいって言われたらどーすんの、付き合ってたら当然さけらんねーぞ?」

「そしたら…わ、別れるもん、…無理だよ、あんな…怖いもん」

裕斗はちょっと黙った後、ビールを俺の分ごと持ってきた。
「まさか曲作ってんの?」




話題がクルッと変わった。
…ありがとう裕斗。



「…うん!なんかこのフレーズいいなって思って歌ってみたくなったんだ!」

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