《MUMEI》

「あの、私、どうしても御剣に戻ってお別れをしたい人がいるんです」

「そうなの? 残念ね…」

神音様は、心底残念な様子だった。

しかし、私が『お別れ』と言ったので、安心した様子で、私達を見送ってくれた。





御剣の『守護神』の自室に戻ってきた私と晶は、すぐに離れに向かおうとした。
(あれ…?)

屋敷の入口に、『姫』が立っていた。

『すまぬが、これから妾と一緒に来てもらえぬか?』

「え? でも…」

私達は、これから離れにいる紗己さんに挨拶に向かうところだった。

御鏡から戻ると、辺りは暗くなり始めていたし、早く行かなければと焦っていた。

『世話役の娘は、食事の支度におわれておったから、先にこちらの用事を済ませても良かろう?

さ、主がお待ちじゃ』

「神君が?」

『姫』は頷き、私の手を取り、『守護神』の屋敷に入っていく。

(?)

「あの…こっちにいるんですか?」

神君は、『守護神』の屋敷には来ないと聞いていたのに…

『そうじゃ。ゆっくり語るには、この方が良いからの』

確かに、ここには『守護神』しかいないから、大事な話をするのは都合はいいと納得した。

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