《MUMEI》

同時に、不安になった私は、晶の袖を掴んだ。

『主?』

「離れないでね、晶」

晶が側にいないと、私は何もできないから。

晶だけが、頼りだった。

『お側におります』

「お願いね」

私が念を押した時、目の前に、木製の観音開きの扉が現れた。

『ここが、主の部屋じゃ』
ギィッという音と共に、『姫』が扉を開いた。

中は、普通の畳の間だった。

私の部屋のように、洗面所や風呂場等は見当たらず、生活感の全く無い、物の無い部屋。

丁度上座にあたる位置に、神君は座っていた。

「あの、用事って…」

「まず、座れ」

神君に言われて、私はゆっくりと上座に向かい、少し距離をおいて座った。

私の隣には、晶が座っていた。

不安な私は晶の袖を握ったままだった。

『姫』は、いつもと同じように神君に寄り添っていた。

「まぁ、そう警戒するな」
神君は、立ち上がり、私に近付いた。

そして、私の肩に手を置いて、言った。

「しても、無駄だからな」
―と。

「どういう、い…?!」

『み』と言いかけた時。

景色が、グニャリと歪んだ。

その中で、神君だけが、歪まず、笑っていた。

私が、目の錯覚かと目をこすった後。

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