《MUMEI》

ようやく、空間は、元の姿に戻った…

はず、だった。

「ここ…どこ?」

歪んだ後、見えてきた光景は、部屋は…

何も無い畳の間では無かった。

そして、私は気付いた。

気付いてしまった。

隣の晶と、神君の『姫』がいないことに。

(どうして?)

どこを見渡しても、晶の姿は見当たらない。

さっきまで、確かに、隣にいたはずなのに。

…私は無意識に震えていた。

(この部屋…)

これによく似た部屋を、私は知っていた。

…時代劇で、私が嫌いな場面の『ある部屋』だ。

そして、私の肩に手を置いたままの、神君を見上げた。

「ここが、何をする部屋か…
お前にも、わかるだろう?」

「知らない! 私、何も…」

私は首を左右に大きく振った。

「本当に?」

神君の私は、今度は首を上下に大きく振った。

「じゃあ、教えてやろう」
「い…や!」

その時笑った神君の顔は、私には、時代劇の悪代官に見えた。

この、薄暗い部屋は…

時代劇で悪代官が町娘を襲う部屋にそっくりだった。
「…」

「…?」

私を押し倒したまま、神君は動かなかった。

「今、俺は、何色だ?」

突然、神君は私に質問してきた。

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