《MUMEI》

訊かれて、初めて気付いた。

神君の姿が普通に、『肌色』に見えている事に。

そして、『すごくかっこいい』その容姿が、鮮明に見えている事に。

これは…女の子達が騒ぐはずだと、この状況でのんきな事を考えていた。

「質問に答えろ」

「見えない」

「何だと?」

「『色』が見えない」

動揺している私の答えに、神君は『そうか』とだけ言った。

…何故か、残念そうな口調だった。

「それより…どいて!」

「嫌だ。

ここはな、当主だけが知る『特殊空間』だ。

ここでは、『守護神』の力は使えない。

今の俺達は、ただの男と女だ。

男と女がする事と言ったら、一つだろう?」

「嫌、…晶!…っ…ん」

ガリッ!

「…っ。そんなに、嫌いか、俺が」

私が噛みついた神君の口の端は、血が滲んでいた。

神君はそこを親指で拭い、血を舐めた。

「あなたこそ、私の事なんか好きでも無いのに、どうして、こんな…痛い!」

神君が私の両手首を掴む手に力を込めた。

(すごい力…)

見た目は明良さんよりは華奢なのに、押さえ付ける力は神君の方が上だった。

「お前は、御剣のものだ。御鏡になど、…渡さない」

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