《MUMEI》
目指すは副長
慌てて羽田と凜もその後に続く。
すぐ真上では、三人とまったく同じスピードで移動するマボロシが、その気味の悪い目で羽田たちを見下ろしている。

「おい、まっすぐ走るなよ!」

走りながらレッカは怒鳴る。

「……くるぞ!!」

レッカの声に、羽田は上を見上げた。
すると、今、まさにマボロシの体から白い液体のようなものが切り離されたところだった。

すんでのところで、羽田は右に避ける。
後ろでアスファルトが溶ける音が聞こえた。

「あ、危なかった……」

「先生、まだ次がきます!」

前を走る凜が上を見ながら言った。
その言葉通りに、三人に向けて次々とマボロシから攻撃が繰り出される。
それを右へ左へと避けながら走り続けるが、無駄な動きが多いせいで体力の消費が激しい。

「……ね、ねえ。いつまでこのまま?」

苦しそうな表情を浮かべて羽田は聞く。

「あと少しだ。隣の地区に行けば、副長がいる」

「副長?」

「そう。討伐隊の」

そう言うレッカは後ろを振り返り、羽田と凜を見た。

「なんだよ、先生。運動不足じゃないのか?」

「う、うるさいわね……」

しかしそれ以上、言い返すことができない。
攻撃を避け、息をすることだけで精一杯だ。
まだ走れていることが奇跡に近い。
そんな羽田の様子を見兼ねたのか、レッカは「しょうがねえな……」と服のポケットから何かを取り出した。

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