《MUMEI》
変わらぬ場所、1
墓地。蝉の声や風の音、自然以外の音がしない神聖な場所。あの時からなにも変わってない
朝早いとはいえども、辺りに熱気は立ち込める。
墓石にかけた水も少しすれば蒸発してゆく。


ここにくるのは何回になるだろう。
昔は毎日ここに来て、ずっと泣いてた気がする。そしたら、日が暮れて咲とおばさんがやってきて、一緒に帰った。

後は墓の前で手を合わせる。それが終わり帰る時、後ろから声をかけられた。
「やっぱりここにいたんだね。」
「咲がなんでここにいるんだ?」
「私も美樹ちゃんとよく遊んだからね・・・・・・・。だから私も御墓参りに。」
美樹とは俺の妹だ。手にバケツもお供えも持っていないって事は俺がいることは予想してたんだろう。
「母さんにも手を合わせといてくれ。」
「でも・・・・」
「いいんだ!母さんはあの時に死んだんだ。少なくとも俺はそう思ってる。」
「悠くん・・・・・・・・」
「じゃあな。俺は散歩でもしてから帰る。」
咲は悠が行く場所は気付いてる。妹が死んだ場所に行くのだろう。
だが気付いてる事をいう気は無いし、止める気もなかった。

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