《MUMEI》

『主は、小娘に惚れておる。小娘を御鏡に奪われたくないから、小娘と交わるまでは出てこぬわ』

『何、だと?』

『主には、あのように、美しい姿に惑わされぬ純粋な小娘が要るのじゃ!

でなければ、主はこのままではますます人としての心を持たぬ機械になってしまう!』

『姫』の必死の説明に、晶は、鳴神の記憶の中にある神尉の言葉を思い出していた。

『俺には、お前が必要なんだ、神那!』

その後の二人の会話は、確か…

『駄目だ』

晶は呟いた。

『何がじゃ』

『姫』は首を傾げた。

『主は、神那様では無い。
神那様は神尉様の、自分自身でも気付かぬ心を理解されていたが…

普通の生活を送ってこられた主には無理だ。

当主は、主に素直に気持ちを伝える方ではなかろう?』

『まぁ、それは…』

神の性格をよく知る『姫』は、頷いた。

『それでは、あの二人はうまくはいかぬ。

今すぐ、当主を…』

『呼び戻せ』と、晶の口だけが動いた。

『? お主、どうした?!』

『姫』が良く見ると、晶の体は透けてきていた。

更に、答えようとする晶の姿は、下から消えてきていた。

『どういう事じゃ?!』

『姫』は困惑した。

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