《MUMEI》

追求する紗己を、『姫』が制した。

「よく、顔立ちを確認してみろ。 あれは、当主だぞ」

「え?…」

紗己は、改めて着物姿の銀色の男を見つめた。

金の髪と瞳をした『男』が言うように、紗己が怒鳴っていた相手の顔立ちは…

当主―神によく似ていた。
神とは滅多に話さない紗己は、神の声は記憶していなかった。

「え?! …で、でも、色が…」

次第に青ざめていく紗己に、『金色の男』が説明した。

「当主は、特別な力を与えられ、あのように進化したのだ」

―と。

「し、失礼いたしました!」

「いい。…ところで、女と言うのは、嫌がりながらも交わりを悦ぶものではないのか?」

パァン!

「…」

気が付くと、紗己は怒りに任せて神の頬を叩いていた。

「女…」

「いい。 …何故、怒る?」
『金色の男』に進化した『姫』を、神は止めた。

「あなたがゆきをこんな風にした張本人だから…です!

嫌だといいながら受け入れるような女は、本当に嫌とは思っていない、計算高い女に決まってる…いえ、います。

本気で抵抗する女と、演技で抵抗する女の違いくらい! わかっ…て くだ…さい!ゆきは、体がこんなに反発するほど、本当に嫌だった!」

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