《MUMEI》
小さな拒絶
    〜海視点〜


栄実は、叫んだ後
斜め下に目線を下ろし、今にも泣き出しそうな顔をした。

そんな栄実を見ると
また、心に黒い針が突き刺さる。


栄実は、さっきみたいに涙をこぼしたりせず
ただギュッと唇を噛みしめて、泣くのを我慢している。


強がっている栄実は、今にも壊れてしまいそうで

俺は、ベンチからそっと立ち上がり、栄実を抱きしめようとした。


それに気が付いのか栄実は下を向いたまま、俺を両手でゆっくりと引き離し、ポツリポツリと話し始めた。


「海・・・さっき言ったよね。

私1人で苦しんできたって・・・


でも、一緒に居たのに傷つけたのにも
気が付かないで
陽奈子1人で苦しませちゃったんだよ・・・?


そっちの方がずっと辛いに決まってる。


1番大切に思ってた人にそんな思いさせちゃったの。


時間が経ったからって許されることじゃないよ」


そう言うと栄実は、クルリと向きを変え
俺に背中を向けて歩き出した。

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