《MUMEI》

紗己は涙ながらに神に訴えた。

「そんなに、嫌…だった、のか?」

神は未だにうなされているゆきの姿を見つめた。

「そんなに、俺が、嫌だったのか?」

「…出て行って下さい」

ゆきに問いかける神を、紗己は睨みつけた。

紗己はゆきを妹のように思っていた。その可愛い妹を無理矢理犯した神を、たとえ当主でも、紗己は許せなかった。

「あなたが側にいたら、ゆきはよくなりません!

さぁ、早く!」

「主…」

神は『金色の男』に引きずられるように、離れから本邸の寝所に戻った。

「主、こんな時に申し訳ないのですが…」

「何だ?」

未だに放心状態の神は、ボンヤリしながらも、『金色の男』に質問した。

「私に、新たな名を与えてほしいのですが…」

「あぁ、それでは『姫』はおかしいな。

…考えておく。

ところで、そうなってもお前は俺の精気が必要なのか?
俺は男と寝る趣味は無いが、どうしてもと言うなら、応じてやるぞ」

苦笑しながら吐き捨てるように、神は言った。

『金色の男』は、首を左右に振った。

「私も、同性の精気はいりません。

この姿で寄ってくる女から得ようと思っています」

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