《MUMEI》 過去夢(かこむ)ゆきをあれだけ傷付けておいて、あっさり眠れる自分に神は驚いていた。 普通は、心配や罪悪感で眠れぬ夜を過ごすはずなのに。 やはり、自分は人としておかしいのだと思っていた。 (もう、朝か…) 視界が眩しくなってきて、神は目を開けた。 「お前が、俺の『剣』だな?」 (は?) 目の前にいたのは、生意気そうな少年だった。 「誰だ? お前?!」 全く見覚えの無い少年に、神は質問した。 「名前を付けなきゃな」 少年は、神の質問を無視して、考えこんだ。 (何かおかしい) 質問というより、神という存在そのものが少年には見えていないようだった。 やがて、少年は、目を輝かせて神に告げた。 「決めた! お前の名前は鳴神だよ!」 ―と。 『鳴神』 その名前に、神は聞き覚えがあった。 ゆきの父親―御剣神尉の剣の名前だ。 つまり神は、今、鳴神の視点で過去を見ている事になる。 消滅した晶。 何故か銀色に変化した神の髪と瞳。 そして、額のあざ。 晶の力が神とその分身に移った時 一緒に、晶が吸収した鳴神の力や記憶が自分の中に入ったのではないかと、神は思った。 前へ |次へ |
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