《MUMEI》 「一度吹っ飛ばしたからな。俺は奥に行くけれど?」 溜息を漏らしながら林太郎は突き進んだ。 「僕は此処を隈なく探すよ」 慶一は体を揺らしながら叢をうろゝしていた。 「……先に帰っていていいけど?」 林太郎は夜晩くに慶一を一人残しておくのが心配だった。 慶一も同じ気持ちのようで顔が柔らぐ。 林太郎は奥へと進む。 草の丈が伸びてゆき、足先に懐中時計が当たる。 林太郎は懐中時計をハンケチで包む。 金メッキが所々剥がれ落ちていた安価な品物である。 運よく夕日が沈む迄に見付けることが出来た。 雑木林の手前は一見荒れ野のようだが、奥へ行けば行く程に森のようだった。 林太郎の気まぐれな好奇心は更に先へと向いて、すっかり探険をしている気になっていた。 白い塊を見付けるまでは 前へ |次へ |
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