《MUMEI》
失格
鈴木が帰ってからシャワーも浴びずに寝てしまった。



プルルルルルル プルルルルルル


ん?
電話がなってる?


「はい、もしもし」


寝ぼけながらも電話をとると、のんちゃんだった。


「昨日、大丈夫やった?」


「え?何が?」


寝起きのため私の思考は停止している。


「鈴木君と!!帰り際、気まずい雰囲気やったやん。ちょっと気になっててん」


「あぁ〜」


気になるくらいならフォローして帰ってくれれば良かったのに・・・


「大丈夫。結局あの後、私の部屋に戻って飲んだんだぁ」


「えぇぇぇぇぇ!」


のんちゃんが必要以上に驚いている。


「鈴木君と二人で?」


「うん」



どうやら・・・のんちゃんは、私が鈴木に襲われたのではないかと心配をしているらしい。


「ずーっと喋ってた。何にもないよ」


「噂では鈴木君って・・・すぐに手、出すらしいんやけど・・・ミキティは・・・例外なんやろか・・・」


のんちゃんが不思議そうに呟く・・・


そう言われると鈴木に手を出されなかったことが、女として失格だったような気がしてきた・・・


「やっぱ・・・私って色気がないから・・・あぁぁぁ」


思わず弱音を吐くと、のんちゃんが励ます。


「そんなことないって!小川君も最初はミキティがお気に入りやったらしいし・・・」


えっ!?


しかし、のんちゃんは続ける。


「鈴木君、私らにあんなこと言った手前・・・出来ひんかったんかな・・・」


ていうか、小川君・・・
正直者すぎ・・・


「のんちゃん私は大丈夫。よく考えたら鈴木に手を出されても困るし・・・」


「そうやんな。ごめんごめん。おもろいし勝手に分析してもうたわ」


たしかに、のんちゃんは分析をよくするよなぁ・・・


「それより、小川君・・・」


思い切って言ってみた。


「あぁ、えぇねん。別に何にも気にしてへんし。それに、ミキティと小川君の間には何もなかったんやろ?」


「うん、全く何も」


これだけは自信を持って言えるわ。


「それにしても鈴木君・・・不思議やわぁ」


そう言って、のんちゃんは電話を切った。

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