《MUMEI》

神尉は嬉しそうに当主である父に、報告を済ませた。
「よくぞ目覚めた、神尉」
「はい、父上」

御剣一族には、国を自然災害から守る『守護神』と呼ばれる特殊能力を持つ者が生まれる。

その『守護神』は、絶対的な存在で、当主となる確率が極めて高かった。

だから、直系である神尉は、父と同じように『守護神』となる日を夢見てきた。

自分と同じ年頃の子供達が遊んでばかりいるのを羨ましいと感じながらも、毎日剣の稽古にも励んできた。

全ては一族の為に。

国を守る為に。

それだけを、教育されてきたから。

神尉はそれだけを考えて生きてきた。


だから、自分が『守護神』となった時は、とにかく嬉しかった。

これで自分は国を守れる存在になったのだと、安心した。

やがて神尉は、本邸ではなく、離れからも、更に離れた『守護神』専用の屋敷で過ごす事になる。

その時神尉は十二歳になっていた。

「なぁ、鳴神」

神尉はポツリと言った。

「俺は、国を守れているのだろうか?

それに…頑張っている俺を、何故皆は変な目で見るんだろう?」

―と。

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