《MUMEI》

「スイマセン、一緒に回りませんか?」


「いいえ、恋人と待ち合わせて今向かう途中ですけどそれでいいなら。」

乙矢がそれで断ったの三回目だ……。逆ナン凄い。

「勿体ねー……」

東屋は羨ましそうにしながら広島焼きを食べている。

「だって浴衣似合ってるし……。」

乙矢は黒っぽい灰色の浴衣が似合ってる。

「二郎もカワイーじゃない」

乙矢の今の褒め方はあまり嬉しくなかった……。
俺は白地に藍色で縦縞に花があしらわれたやや女々しいデザインだ。

「俺もカッコイイがいいな」

「そーゆー仕草とかがカッコ悪いんでないか?」

東屋が言うのは食べ方だ。
俺はフランクフルトを食べるときに袖口を押さえてしまうのに対して乙矢は豪快に肩まで捲っていた。
……成る程。
見習って袖を捲ろうとしたら貧弱な腕に自分で悲しくなって止めた。



「なあなあ、神輿見に行こう!」

「東屋、早いよ……!」

乙矢に手を引かれて人だかりから顔を出す。

「……ぷはっ」

やっと息が出来る。
ちょうど、神輿が通る所だった。

法被を着た人達が息を合わせて担いでいる。




「あ、七生」


「え、内館ー?居たか??」

俺が見間違えるはず無い。

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