《MUMEI》

神尉の力は強かった。

通常一人の『守護神』には、一つの要素しか備わらないはずなのに、神尉は風と雷の二つの要素を持っていた。

神尉は毎朝父から教わったように、日本地図に印を付け、危険区域には自ら出向いて災害を斬った。

火の『守護神』である父と違い、神尉は風に乗って、ヘリ以上の速度で移動する事ができた。

しかし、それでも限界はあった。

いくら力があっても

やはり、神尉は人間だった。

『守護神』と呼ばれても、神では無い。

同時に同じ規模の災害が発生すれば、どちらかを選ばなければならなかったし

食事も休息も睡眠も、最低限必要だった。

神尉は、日に日に己の無力感を痛感していた。

そこに、力に目覚めた時の、あの無邪気な少年の姿は無かった。

そして…

もう一つ、神尉を悩ませるもの。

それは、神尉を見る周囲の目が

口では神尉を尊敬するような事を言いながら

…実は、人外な力を持つ神尉に対して、怯えるような、恐怖を感じた目をしている事だった。

もっとも、周囲が一番恐れたのは、『当主の御子息』の機嫌を損ねる事だった。

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