《MUMEI》

そんなある日。

神尉は当主に呼び出された。

「最近、どうも機嫌が悪いようだな」

「いえ、そんな事は」

言いながらも、神尉の眉間には無意識にしわが寄っていた。

「まぁ、いい。
少し早いが、お前に学んでおいてほしい事がある」

「?」

神尉が首を傾げると、当主が誰かを呼んだ。

しばらくすると、数人の使用人らしき女性達が入ってきた。

「好きな者を選べ」

「父上?」

神尉には、当主の言っている意味がわからなかった。
よく見ると、どの女性もそれなりに美しかった。

「お前には、今晩から『女』を学んでもらう。

いい気晴らしにもなるだろう」

「…興味ありません」

神尉は丁重に断った。

正直、女など興味が無かった。

第一、神尉はまだ十二歳なのだ。

無くて、当たり前だった。
「まぁ、そう言うな。これは、当主として、『守護神』として学ぶべき事だ」

「どういう意味ですか?」
女の相手をする事と、当主や『守護神』が関係するとは神尉には思えなかった。
「今はおらぬがな。女の『守護神』が現れた時の為に、女を悦ばせる術は必要なのだ。

女の『守護神』から得られる精気は、お前を…男の『守護神』を強くする」

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