《MUMEI》

そして、事件は起きた。

「神尉、…貴様」

「父上は、こうするために俺に女を教えたんでしょう?

言っておきますが、俺が無理矢理じゃない。

…こいつが誘ってきたんですからね」

怒りに震える当主の目の前で、神尉は隣で眠る神楽の髪を撫でた。

「お前と神楽は…

兄妹なんだぞ!」

「だって、神楽は水の…女の『守護神』でしょう?

俺が『守護神』として強くなるのを協力してもらっただけですよ」

「…」

実の妹と寝たというのに、平然としている神尉に、息子に当主は愕然とした。

高等部に上がってからも、女遊びが激しいのは変わりなかったが、まさか、ここまで鬼畜とは思わなかったのだ。

事実、神尉は『守護神』としての役目だけは果たしていた。

「いつから…なんだ?」

「神楽が十六の誕生日を迎えた日からですよ」

それは、神楽が水の『守護神』として目覚め、神尉がいる屋敷に住み始めた日だった。

今は、それから一年後。

神尉は十八歳になっていた。

既に、心は荒みきっていた。


―その後。

神尉は当主の特殊空間で、体罰を受けた。

神尉が鳴神にした話によると、そこは寝室ではなく、…鉄格子の冷たい牢だったと言う。

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