《MUMEI》

人で潰される……

息苦しい上に下駄で指が痛い。
ちらりと足先を見た。





………………血 !

軽く眩暈がする。

足を引きずりながら最悪のコンディションで流されるままに歩む。



さっきから後ろがぐいぐい押してきて暑苦しい。
……やたら密着度が高いし。




       痴漢……?
いや、気のせいだ。

腰をまさぐられている気がするのも気のせいだ。

襟元に指が入って来ているのも気のせいだ。

その指が鎖骨をなぞって更に胸元に移動するのも…………………



「 ――――――アっ              …………ギャアア!」

やっぱり痴漢だった!
危ない、変な声出た!
後ろから頭突いてやった、ざまー味噌漬け!


「……痛〜〜〜〜ッ」

ふはは、俺を触った罰だ…………ん?その声……



まさか、

「……七生?」

「顎が……」

頭突きしたときぶつけたんだ……。




「ちょっと来い」

七生は後ろから俺の腰に手を回してぐいぐい人を縫って誘導して行く。


「エ……、エッ?!」

七生が居るだけで移動速度が全然違う。


静かだ。
神社の鳥居が見えた。
二人、鳥居に向かって長い階段を上がる。

「……痛い」

足の傷口が痛む。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫