《MUMEI》

それから、仕事を終えた神尉はこっそり御鏡を訪れるのが習慣になっていた。

「…見つかったら、どうするの?」

「逃げるから大丈夫。
…それより、言わないの?
俺の事」

「説明が面倒だから。
誤解されると嫌だし」

淡い期待を抱いていた神尉に対して、神那はいつものようにきっぱりと言い切った。

「誤解されたくない相手でもいるわけ?」

「いるわよ」

即答した神那に、神尉はムッとした。

「相変わらず変な色ね」

そんな神尉を、神那は見つめた。

「今、何色?」

「教えない。最初ほど、つまらなくないけどね」

神尉の質問に、神那はそう言って、悪戯っぽく笑った。

神那の笑顔に神尉は何故かドキドキした。

神尉は、様々な女達と関係を持ってきたが、抱いていない女に興奮するなど初めてだった。

本当に、触れたらどうなるだろうと会う度に考えるようになった。

「また、変わった」

「えぇ?!」

神那は人の感情が色で見えるらしい。

己の欲望を見られた気がして、神尉は慌てた。

「今日はもう、帰りなさい。
『守護神』も人間だから、気晴らしはいいけど、別に来なくてもいいからね」

『守護神も人間だから』

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