《MUMEI》

「何、それ?

男と接すると、何かあるわけ?」

「…よくわからないけど。
大人達は『交わると力を失う』って…

キャッ!」

気が付くと、神尉は風に乗って御鏡の屋敷の本邸に向かっていた。

間取りはわかっていた。

当主となる神那がいそうな場所も、見当はつく。

「…神尉?」

神尉は、神那を見付けると、抱きかかえて更に移動した。

「何してるの?!…離して!」

「嫌だ、俺にはお前が必要なんだ、神那!」

誰もいない草原に辿り着いた神尉は、神那を押し倒した。

「何、これ…?」

神尉が神那の額に触れた。
神那の額の中心には、今まで無かった真珠のような宝石が埋まっていた。

「これは、…当主の証よ」
「そんなもの…必要無い。
お前は俺のものだ!」

神尉は力任せに無理矢理神那を抱こうとした。

その時。

「ちょっとは人の話を聞きなさい!」

神那は両手で神尉の両頬を包んだ。

「あなた、まさかとりあえず私の資格を奪おうとか考えてるの?」

真っ直ぐな瞳で神那は神尉を見つめてきた。

「そうだよ!悪いか!」

「そんな事して私の資格を奪っても、私はあなたのものにはならないわよ。

それとも私の心はいらないの?」

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