《MUMEI》

そこまでで、視界は真っ暗になった。

『お前は間違えた』

しゃがれた老人の声に、神は振り返った。

そこには、金色の狐がいた。

「お前、鳴神か」

『いかにも』

鳴神は、続けた。

『お前が自分の過ちに気付きそうもないから、主の記憶を見せたのじゃ。

主とお前は似ている。

じゃが、神那様と姫は違う。

姫は、純粋じゃが、色恋沙汰に鈍いところがある。

お前の淡き恋心があっても、見間違いじゃと思いこむし、お前のあの若造に対する嫉妬も、何故怒っておるのかと理解できておらんかった。

それに、…あの部屋で姫を襲ったのは、最大の失敗じゃったな』

「あの時は…」

ただ、晶に邪魔されたくなくて、神は必死だった。

もし、他の場所だったら、ゆきは気付いたかもしれない。

自分に対して神が『桃色』―『恋心』を抱いていた事に…

しかし、…全て遅かった。
神那が『一生許さない』と言っていた行為を、神はゆきにしてしまったのだ。

「…どうしたらいい?」

『これを見て、自分で決めるがいい』

そして鳴神は、ゆきが生まれてから今まで見てきたゆきと晶の姿を神に見せた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫