《MUMEI》
†第一燿 朱の瑛†
†第一燿 朱の瑛
(あかのえい)†   



頭がぼんやりする…………
霧がかかったように景色が霞んでみえる。

なんだか少し恐い………。

初めて恐いと感じたのはこの時だったのかもしれない。



雨音のせいだろうか、さっきから辺りが騒がしい

「……うゃ…香…弥………、…こえ…て……香……や…、しな…い…で…、もう……し、だから……が……って。」


誰…………?


声の方に向たいのに……何かに圧されて動けなかった……

しかし、誰かが僕の手を優しく握ってくれていた……………。






ピィタ…ピィタァ…ピタァ………。

淡いが深い霧の中、雨音だけが虚しく響いた……。






どれくらい経ったろう……まだ何かに圧されている……………。




ふと目をやると目の前の道路に人形が転がり出している……




僕の人形…………。




手を伸ばしたがとどかない
誕生日プレゼントなのに…………



けれど気ずけば、誰かがまだ手を握ってくれていた………

前よりもずっと強く………………。



ピィィィポォォォォォ 
ピィィィポォォォォ

ピィィポォォォォ

ピィィポォォ
ピィィポォォ



サイレンが目の前で聞こえて、何かが停まった……。


「だ………か…、ぼう………ず……、もう少し……ら、がんば………れ。」

あの時とは別の誰かがそう言った……、

何かから圧されなくなった…………。



それから、その別の誰かに抱き抱えられた………………。



人形………。



そうだ、僕の人形を取らないと………………。



人形を取ろうと手を伸ばしたら、後ろから何かに引っ張られた………………。




純白の霧の中、目を凝らして見てみると、まだ誰かが手を握っている。



もういいんだよ、もう寂しくないから手を離して……………。



しかし、その手は離してくれない…………。



抱き抱えている誰かが悲しそうにその手を離させた………。



そうすると段々霧が薄くなり始め、


僕は初めてソレを見た………



強く硬く握る事しか出来なくなった、

冷たい手を。





朱く染まったその手は人形のように力無く垂れ下がっていた。




サイレンで朱色に染まった道路には、



丸めた紙屑の様になった自動車の側に、




首のない人形が独り雨に濡れていた…………………。






少年の瞳は、紅(くれない)に染まり……………。

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