《MUMEI》
涙の理由
   〜栄実視点〜


海に背を向け歩き出す。

もう涙が堪えきれなくなってしまったから。


溢れ出す涙の理由を知られたくないから・・・


"自分のしたこと許しちゃいけない"って頭では分かってるのに・・・
心から溢れ出す気持ちを抑えきれない。


知られちゃいけないの・・・。
私の心の奥に芽生えた気持ちを。


「栄実・・・?」

私を呼ぶ海の声も、私に届かなかったかのように私は、歩き続ける。


「栄実!!」
っというさっきより強く放たれた海の声と
私の手首を掴む海の体温に、私は足を止める。

「・・・・・何?」


そっけない私の返事に


「栄実は自分が許せないかもしれないけど
それで栄実を大切に思ってる麗羅チャンや歩を失ってもいいのか?」

っと真剣に返す。

胸にズシンと重みを感じる。


自分にも言い聞かせるように
私は、冷たく鋭い口調で言葉を吐き捨てる。


「栄実は、自分と約束したの。
"大切な人を作らない"って・・・
だから麗羅のことも歩っちのことだって
何とも思ってない!

失なったって・・・栄実には関係ない!!」


自分の言った言葉が、心に次々と刺さっていく。

でも、こんな痛み陽奈子が受けた痛みに比べたら・・・。

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