《MUMEI》
爆弾
「しょうがねえな。効果があるとは思えないけど……」

ポケットから出てきたのは小さな四角い箱だった。
レッカはそれを握ると、突然立ち止まるってマボロシを見上げる。

「レッカ?」

驚いて凜が呼ぶが、レッカはマボロシを見上げたままヒラヒラと片手を揺らした。

「先行ってろ。すぐ行くから」

凜はレッカがしようとしていることを悟ったのか、隣で同じように立ち止まっていた羽田の腕をとった。

「えっ!ちょ、なに?レッカくんは?」

「いいから、早く。あの角を曲がりますよ」

強引に走らされた羽田は、角を曲がったところで転倒してしまった。
それとほぼ同時に、鼓膜を破るような爆音が辺りに響き渡った。

羽田は反射的に目を閉じる。
そして、ゆっくり開いた。
すぐ目の前には耳を塞いでしゃがみ込んでいる凜の姿。
凜は手を下ろすと、様子を窺うように静かに立ち上がった。

「ね、ねえ。なに、今の」

まだ立ち上がれない羽田は座ったまま聞いた。

「レッカが爆弾を投げたんです」

「爆弾?」

「もちろん、マボロシ用のですけど……」

凜の言葉は途絶えた。
彼女の視線は上を向いている。
つられて羽田も見ると、さっきと同じ雲型マボロシがフワリフワリとこちらへ移動してきていた。

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