《MUMEI》
四年前
一人の少年が街を歩いていた。

なにやら悲しげな表情をしている。

右手の人差し指には、世界一の魔石職人である父が命を賭して作った魔石をはめた指輪をはめられている。

その小指の爪ほどの大きさの魔石は、ゼノンの父が全魔力を費やして作った最高の魔石だった。

父の飼っていた不死鳥の涙と、世界に十グラムしかないといわれている鉱石、トラスト
(それもゼノンの父が全財産を費やして独自に入手したので、もはや存在しない。)
の化学変化によって作られたその魔石は、試しにはめた父の魔力を全てすいとってしまったのだ。

しかし、何故かゼノンはその指輪をはめても無事なのだった。

魔力を吸いとられる感覚はあったのだが、ゼノンはいたって無事だったのだ。

ゼノンの母はだいぶ前になくなっており、ゼノンはもう一人だ。

そして、うつむいていた少年が頭を上げた。
紅い髪に紅い眼。そして、その眼にはもう一点の曇りもなかった。

少年の向かう先、それはギルドだ。

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