貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
いつものスーパーで。
アキの誕生日を2週間後に控えたある日、わたしは一人でいつものスーパーに来て居た。

何もあげられないけど、せめてアキが喜んでくれる美味しい料理を作りたいと思って。


時期的にクリスマスも近く店内はきらびやかで、普段はなかなか見かけない商品も並んで居るのが嬉しい。



「うーん…」


わたしはカゴを片手に、お肉のコーナーの前で足を止めていた。


アキと暮らし始めて約半年、料理自体は何度も作っているのだけど、特別なメニューを考えられるほどのスキルがある訳じゃない。

かといって、部屋でうじうじしていても埒があかないので、ここ最近はこうやって一人でスーパーに来て、怪しまれない程度に食材とにらめっこを繰り返す。






「あのー、すいません」


突然声をかけられて、ビクッとする。

振り向くと、そこにはスーパーの名前が刺繍されたエプロンを着けた男の人が立っていた。


「…あ、ごめんなさい。邪魔ですよね」

もしかしたら、お肉コーナーの前で立ち止まり過ぎてて他のお客さんからクレームでも入ったのかも知れないと思い、わたしはその店員さんに軽い会釈をして、そこから立ち去ろうとした。


「あ、あぁ…、違うんです!」


2〜3歩進んだところで背中に声を受け、わたしはまた振り返る。


「なんですか?」


エプロン姿の店員さんが、ちょっと嬉しそうな顔をしてこちらに近づいて来る。


「オレ、8月からここで働いてるんです」

「……はぁ」


目が点になるって、こういうことかと思った。



一体この人は何を云いたいんだろう?


わたしは心の中で、アキにSOSを送って居た。

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