《MUMEI》

田畑若菜を知る者との接触、容易なことではなかった。
涙花の中学見学を利用してOBと話す機会が持てた。

若菜が在学していたのは超名門の受験校だった。
そこに、若菜はいたのだ。

若菜は唯一、この学校で退学させられた。





当時、暗黒記録、と噂された女らしい。
学校によって揉み消された
惨劇、若菜が起こした事件がある。

若菜はトップクラスの優等生で、模範的な生徒だった。

誰もが認め賞賛した彼女は

突然深夜、人を引き摺りながら歩き回った。

寮の隅々を夢遊病状態で歩き回ったのだという。

若菜が引きずった人物は心的ショックで口がきけなくなったそうだ。

日頃から仲が良かった二人で、まさかこんなことになるとは予想しなかったという。

その一晩で兎小屋の兎がめちゃくちゃになって一匹残らず死んでいたそうだ。

小屋の中にも引きずられた跡が有り、当の本人達には記憶が無く、気味悪がった。

兎小屋の付近は男子寮から近い。
若菜の体は全く汚れていなかったという。


室内しか動き回っていなかったのだ。

兎小屋を荒らしたのは
引きずられた相手か、空手部員二人か、それ以外の誰かか、全く違うものが齎したものか。

若菜が注意を向けている間に兎小屋で作業をしていたかもしれない。
そうなれば寮から近かった空手部員が可能性としては高い。

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