《MUMEI》

神は、ゆきの眠る部屋の入口で、紗己に自分の決意を伝えた。

「ふざけないでください」
「…ふざけてなどない

ただ、…償いたいだけだ」

「今更あなたが何をしても、ゆきがあなたを許す事はないと思いますよ

…もちろん、私もです」


紗己は神を睨みながら、冷たく言った。


「わかっている
それでも、…俺の中には、確かに晶の記憶がある。

晶の代わりがつとまるのは、俺だけだと…思うから。

いや」

そこまで言って、神は首を振った。


「これは、ただの言い訳だ。

俺はゆきを愛している。

だから一緒にいたい」


「よくも、ぬけぬけと…」

紗己は鬼のような形相で、神を睨んだ。

「そんな事、私がさせません!」

「…とりあえず、隣にいる」


これ以上話しても、今は無理だと神は悟り、隣の部屋に入っていった。


ゆきに触れる事はできなくても


ゆきの顔を見ることができなくても


紗己に阻まれても


…ゆきが許さなくても


できるだけ、側にいる


晶の代わりに、晶として


それしか、神にはゆきに償う方法が思いつかなかった。

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