《MUMEI》
暗闇
(あれ?)

目を開けても、そこは真っ暗だった。


だから、私は今は真夜中だと思った。


すると、足音と、ふすまを開ける音がした。


(どうして?)


音はするのに、視界はまだ真っ暗だった。


「おはよう…ゆき?!」

おはようと言う事は、今はどうやら朝らしい。


(もしかして…私…)


嫌な予感がした。


「ゆき、やっと起きたのね! 良かった!


あなた、一週間も眠っていたのよ」


私を抱きしめる柔らかい、温かい感触。

(それに、この声…)


「紗己…さん? なの?」


「そうよ。ここは、わかるわよね」


「…?」


私は、首を傾げた。


「…ゆき?」


「わからない」


私は、正直に答えた。

紗己さんの口調から、以前来たことがある部屋だとは思ったが、どこなのかはわからなかった。

私の前には暗闇だけが広がっているから。


「私は、わかるわよね?」
「紗己さんでしょう?」


この声は、紗己さん以外に思いつかなかった。


「じゃあ、…どうして…

まさか!」


そして、紗己さんは恐る恐る確認した。


「ゆき、…私が、見える?」

私は首を横に振った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫