《MUMEI》
鉄塔
その後を追うように、レッカもこちらへ向かってくる。

「悪い! 失敗だった!」
そう叫ぶレッカの後方から、一回り小さな雲型マボロシがワラワラと飛んでくる。

「ええ! なんで?」

「……分裂、したみたいですね」

「いいから、走れって!!」

レッカの声に、再び二人は走りだした。

執拗なマボロシからの攻撃をよけつつ走るせいで、通り過ぎる羽田側の世界の人からは妙な目で見られてしまう。
今の凜と羽田は、明らかな不審人物なのだが、そんなことにかまってはいられない。

「ねえ、どこまで……?」

羽田は息があがりすぎて、その先の言葉が出ない。
それでもレッカに伝わったらしく、前方を指さした。

「あそこまでだ」

それは、大きくそびえ立つ鉄塔だった。

「副長はでっかいマボロシ担当だから、あれを利用して攻撃してるはずだ」

「……はずって」

「だって、今はなんの攻撃もしてないからさ。もしかしたら、別の場所に移動したかも」

「…………」

いい加減なレッカの言葉に羽田は言葉も出ない。

「まあ、行ってみるしかないってことですよ」

息を弾ませながら、凜は言った。

とにかく目標が見えたことで、羽田にわずかな気力が沸いた。
そしてまもなく、ひたすら走り続けている三人に、ようやく鉄塔が近づいてきた。

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