《MUMEI》
勝利
バーに入ってからもリナさんは喋り続けた。


「それにしても鈴木君と、こんな風に再会するなんて思わへんかったわぁ。もし美樹子さんと一緒じゃなかったら、声もかけへんかったと思う」


やたらと偶然を強調するのが癪にさわる。


「前会ったのって7月だったっけ?」


鈴木がリナさんに聞く。


「そうそう!タツヤ君の家で」


リナさんは嬉しそうに答え、二人は初めて会った日の話で盛り上がっている。


私、まったく会話に入れないんだけど…。




あまりに退屈すぎて、手持ちぶさたをお酒で誤魔化していた。






なんか…この場に私、いなくても良いんじゃない?

帰ろうかなぁ…







「おいっ!」


!?


「おい!何寝てんだよ」


鈴木が私を起こす。


「え?私寝てた?」


まったく記憶がない。


「いびきかいて寝てた」


「マジで(@_@)!!」


「うっそー」


鈴木が憎たらしく私をだます。


「もぉー!鈴木のバカ」


思いっきりバシバシ叩いてやった。


「いてーよ!バカ女」


意地悪なウソつくからじゃん!!




「美樹子さん大丈夫?」


リナさんがこちらを見ている。


「結構飲んでるみたいやし、今日は先に帰った方が良いんちゃう?」


つまり…鈴木と二人っきりにしろってこと?


「お前すぐ酔うからな。もう帰った方がいいかもな」


鈴木まで…てことは、私はお邪魔虫ってこと?


「美樹子さん電車?タクシー?」


リナさんが偽善者ぶって聞いてくる。


「俺がタクシーで送るからいいよ」


鈴木がすかさずリナさんに言う。


「鈴木君も帰んの?」


リナさんが意外な顔をして聞く。


これは予想外の展開!?


「だって、こいつ一人で帰すの危ないじゃん」


そうだそうだー!


「鈴木はもう帰ってもいいの?私、タクシーなら一人で大丈夫だから」


鈴木が残らないのを分かった上で、敢えて言った。


「俺はもう十分飲んだから良いよ」


ほらね。


なんだかリナさんに勝った気がして嬉しかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫