《MUMEI》 落ち着いた聲色だったので二十前後の女性を林太郎は想像していた。 実際は十五歳程度の娘で遥かに予想を裏切るものであった。 色事に冷めた林太郎に初めて自分より下の者を美しいと思わせる美貌を持ち合わせていて、彼女は温室育ちなのか日本人離れした白く抜ける肌が遠目からだと着物に同化して見えてた。 飾り気の無い無地だ。 純粋無垢な彼女をより引き立てる。 また、彼女の窓枠に寄り掛かる姿は絵画を鑑賞しているようであった。 林太郎はあの窓が天上に繋がっていると幻惑された。 「此処です。此処に居ます。」 戀に手を伸ばすように林太郎は懸命に自らの存在を固持する。 シェークスピアの一節でもすらすら読み切ってしまいそうな勢いだった。 前へ |次へ |
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