《MUMEI》
幸せになれない理由
 何で俺らは幸せになれないんだろう―?
 そう思うのは俺だけか??

 みんなボロボロの心と身体を引きずって歩いてた。




 俺が退院する日。
「なぁ、涼哉・・・・・お前は今幸せか?」
「ううん」
「だよな。俺ら6人全員不幸せなのかな」
「そうかもな」

「俺の兄貴・・・・・・どうなったんだろ・・」
「わかんない」


「もうすぐ、3年生になるんだな」
「そうだな。俺等がであって・・もうずいぶん経ったんだな」
「確かに。いつの間にか・・年が過ぎてって・・」
「来年度は・・陸上部がんばって大会で優勝でも何でも」
「俺、陸部やめる」
「・・・・何で・・」
「もう、やる気でないし」
「やれよ、お前・・タイムだって大会の優勝タイム越してるんだから」
「走る意味が分からなくなった」
「えっ?」
「1年生の頃・・なんでもやる気がない俺が・・陸上部で陸上を始めて・・そんで・・3年の先輩のタイムも越して・・」
「自慢にしかきこえねぇぞ」
「まぁ、聞いてくれ。ランニング以外は必死にやってた」
「ランニングもやれよ」
「短距離を本格的に走るのは初めてだったし・・なのに・・先輩のタイムを抜かした事に驚いた。それから・・陸上が楽しくなって・・どんどん好きになってた。幸せだった。自分の足で自分の風を起こし、それを感じられることが。気持ちよくて・・嬉しくて・・。でも・・今は何か違うんだよ」
「何か?」
「あの頃はタイムがどうとかあまり気にしなかった。でも、タイムが落ちたとか、スタートダッシュが遅いとか・・めっちゃ気になりだして・・もう、楽しむために陸上やってる気がしない」
「当たり前だよ。俺だって、今タイムを気にしてる。あの頃と違って気持ちに余裕が出来たんじゃないか?」
「そうかな」
「俺たちは3年になって、陸上部を引っ張っていかなきゃいけない・・だから・・あの頃みたいに・・自分の事が必死で居られないと思う。でも、それは・・俺らが確実に大人になってる証拠なんだと思う」
「証拠?」
「さっき、前は走るのが幸せだったって言っただろ?今は、走るのは苦痛で苦痛でいやな事か?」
「違う」
「違うだろ。お前がおまえ自身の作った風とか想いとか身体とかに慣れたんだと思う」
「そっか・・・・・・・・・俺・・」
「陸上に、幸せ感じてるんだよ」
「お前は?」
「えっ、俺?」
「お前は幸せじゃないのかよ」
「俺・・・・・・・・・・しあわせなんだ」
「俺らは近くにある幸せに気付いてないだけなんだよ」
「不幸せなんかじゃないんだ・・・・」


 俺ら、これからがんばるよ??
 友祥、見てろよ・・!!

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