《MUMEI》
敗北
「せっかくだし少し休んでから帰る?」


もう少し鈴木と一緒にいたいと思って言ってみた。


「部屋汚いんだろ?」


「一回見られてるし平気」

「じゃ、少しだけ休ませてもらおうかな…ていうかトイレ貸して」





鈴木がトイレに入ると鈴木のバッグの中で携帯が鳴った。


「鈴木の携帯鳴ってるよ!」


トイレにいる鈴木に声をかける。


そしてトイレから出てきた鈴木が急いで携帯を手に取ると、


「あ、切れた…」


言った後、少し黙り、


「詩織だった」


と鈴木が言った。



「かけなおしたら?」


本当は電話してほしくないけど…


鈴木は迷っている。
そしてポツリと呟く。


「数週間、距離を置いてるから寂しくなってかけてきたのかな?」


「我慢できなくなったか…急用か…じゃない?」


私の言葉に鈴木が反応する。


「急用だったらまずいよな…」


急用なら鈴木からの連絡がなくても、後からメールか電話をすると思う…

とは言えなかった。
その代わり、


「気になるなら電話したら?」


と言ってしまった。




「ごめん、ちょっとだけ外で電話してくる。すぐ戻るから」


そう言って鈴木は出ていった…



やっぱり詩織さんには勝てないんだ…私。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫