《MUMEI》
内藤視点
だいたい想像はつく。
加藤は…きっと…男に無理矢理犯された。
その事が今一気に爆発した。
今までその事いっぱい我慢して…抑えてきたんだ…
小さな躰が震えている。
やり場のない想いが指先に凝縮するかの様に俺にしがみつく。
加藤!加藤…、ごめん、
俺のせいで怖い事思いださせて!!
思わずとはいえ床に倒した自分にも腹が立って仕方がない。
軽率だった
…軽率だった…
情けない、夜な夜な妄想してきた自分にも汚さを感じ吐き気さえ覚える。
「帰って…」
漸く落ち着いた加藤から出た第一声。
テーブルに伏して全身で全てを拒絶している。
「平気?」
「いーから帰れ!!」
「…」
▽
俺はマンションを出た。
今はそっとしてあげないといけないのを悟ったから。
「なんてことしてくれたんだ、誰だよ…」
――どうしても立ち去れなかった。
加藤から少しでも近いところで気持ちだけでも守りたくて、俺はバカみたいにコンクリートの廊下に暫く座り込んだ。
動けない。
呼吸が苦しい。
死にそう。
加藤!
加藤!!
ほっとくなんて、俺には無理だ!!
バンッ!!
「ゴメン!」
ずかずかと部屋に入る。
「な!内藤?」
ベッドに転がっていた加藤は慌てて起き上がった。
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